2026年度の最低賃金は全国平均1,177円
厚生労働省が2026年9月3日に取りまとめた2026年度の地域別最低賃金の答申では、全国加重平均が1,177円となりました。前年度の1,121円から56円の引き上げです。
ただし、全国が10月1日に一斉に1,177円になるわけではありません。最低賃金は都道府県ごとに金額と発効日が異なり、発効日は10月1日から12月上旬までの間に分かれています。1,177円はあくまで全国の加重平均です。
関東の最低賃金(10月1日発効)
| 都県 | 最低賃金 |
|---|---|
| 東京都 | 1,280円 |
| 神奈川県 | 1,279円 |
| 埼玉県 | 1,196円 |
| 千葉県 | 1,195円 |
埼玉県では、パートやアルバイトを含め、県内の事業場で働くすべての労働者に適用されます。
最低賃金が56円上がると収入はいくら変わる?
全国平均の上昇額56円で、年52週として計算してみます。
- 週20時間の場合:56円×20時間×52週=年間約5.8万円(月換算で約4,900円)
- 週30時間の場合:56円×30時間×52週=年間約8.7万円(月換算で約7,300円)
実際の増加額は、勤務日数や地域、現在の時給によって変わります。
10月から「106万円の壁」が変わった
これまで、一定規模以上の企業で働く短時間労働者が社会保険に加入する条件には、「所定内賃金が月額8.8万円以上」という賃金要件がありました。年収に換算すると約106万円になるため、「106万円の壁」と呼ばれてきました。
日本年金機構によると、この賃金要件は2026年10月1日に撤廃されています。今後は「年収が106万円を超えるか」だけでは、社会保険の加入を判断できません。
これから重要になるのは「週20時間」
2026年10月以降、短時間労働者の社会保険加入で重要になるのは、週の所定労働時間です。主な条件は次のとおりです。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 学生ではない
- 2カ月を超えて雇用される見込みがある
- 厚生年金の被保険者数が51人以上の企業などで働いている
企業規模要件も段階的に縮小されます
| 時期 | 対象となる企業規模(厚生年金の被保険者数) |
|---|---|
| 2027年9月まで | 51人以上 |
| 2027年10月〜 | 36人以上 |
| 2029年10月〜 | 21人以上 |
| 2032年10月〜 | 11人以上 |
| 2035年10月〜 | 企業規模要件を撤廃 |
ここでいう人数は、単純な従業員数ではなく、厚生年金の被保険者数(フルタイムの従業員と、週の労働時間がフルタイムの3/4以上の従業員の合計)で数えます。
「106万円以下なら扶養内」はもう通用しない
「年収106万円を超えなければ社会保険に入らなくていい」という考え方は、賃金要件がなくなったことで成り立たなくなりました。厚生労働省も、106万円を意識して就業調整する必要はなくなったという趣旨で案内しています。
これからは年収だけでなく、「週何時間働く契約になっているか」を確認することが大切です。
130万円の壁はなくなっていない
混同しやすいのですが、130万円の壁は別の仕組みで、今回なくなったわけではありません。
会社員の配偶者などの社会保険の扶養に入っている人は、年収が130万円(見込み)を超えると、扶養から外れる可能性があります。週20時間未満で働いていても同じです。なお、扶養認定の判定は2026年4月から、労働契約書の内容に基づく方法へ見直されています。
整理すると、次のようになります。
- 106万円の壁:社会保険加入の「月8.8万円以上」という賃金要件が撤廃された
- 130万円の壁:扶養認定の基準として残っている
社会保険に入ると手取りは減る?
健康保険・厚生年金に加入すると、自分で保険料を負担するため、加入直後は手取りが減る場合があります。
一方で、社会保険にはメリットもあります。
- 将来の厚生年金が上乗せされる
- 病気やケガで働けないときに、傷病手当金を受けられる場合がある
- 出産時に、出産手当金を受けられる場合がある
「保険料を取られるから損」と単純に考えず、保障も含めて判断しましょう。
「保険料調整制度」もスタート。ただし対象は限られます
2026年10月から、保険料調整制度も始まりました。
これは、新たに社会保険に加入する短時間労働者が、手取りの急な減少を理由に就業調整しなくてもよいように、事業主が保険料の一部を一時的に負担することで、本人の負担を通算3年間軽減できる制度です。事業主が追加で負担した分は、後で調整されるため、最終的に事業主が納める保険料は増えません。
ただし、すべてのパート・アルバイトが使えるわけではありません。
- 対象は、2026年10月1日以降に新たに任意特定適用事業所となった事業所などです。2027年10月以降の適用拡大で新たに対象になる事業所も含まれます。現在すでに51人以上で社会保険の対象になっている会社は、対象外となる可能性があります。
- 本人の要件として、週20時間以上で、標準報酬月額が12.6万円以下(月収13万円未満)、学生ではないことが必要です。
- 利用には事業主の申出が必要です。
- 軽減割合は、3年目(通算25か月目以降)に1・2年目の半分になります。
利用できるかどうかは、勤務先に確認しましょう。
最低賃金アップで注意したい「働く時間」
最低賃金が上がれば、同じ時間働いても年収は増えます。週20時間で年52週働く場合の例です。
- 時給1,200円:1,200円×20時間×52週=約125万円
- 時給1,300円:1,300円×20時間×52週=約135万円
(※東京都などで最低賃金を上回る時給の例です)
扶養内で働きたい人は、時給だけでなく、週の労働時間・年間収入・社会保険の加入条件をまとめて確認する必要があります。「去年と同じ時間働けば大丈夫」とは限りません。
給与明細と雇用契約書で、この5つを確認しよう
10月以降、パート・アルバイトの人は、一度次の点を確認してみましょう。
- 自分の地域の最低賃金
- 現在の時給
- 週の所定労働時間
- 勤務先の厚生年金の被保険者数(企業規模)
- 社会保険の加入状況
特に、現在の時給が新しい最低賃金を下回っている場合は要注意です。最低賃金は、パート・アルバイトにも原則として適用されます。
まとめ
- 最低賃金は全国加重平均で、1,121円から1,177円へ56円引き上げられました(発効は都道府県ごと)
- 10月1日に、社会保険の「月額8.8万円以上」という賃金要件が撤廃されました
- これからは「106万円を超えるか」より**「週20時間以上働くか」**の確認が重要です
- 130万円の壁(扶養認定)は残っています
- 保険料調整制度は始まりましたが、対象の事業所や人は限られます
最低賃金が上がった今こそ、「時給はいくらになった?」だけで終わらせず、働く時間・年間収入・社会保険をセットで確認しておきましょう。
※この記事は2026年10月2日時点の、厚生労働省、日本年金機構、各都道府県労働局などの公表情報をもとに作成しています。社会保険の加入可否は、勤務先の規模・労働時間・雇用形態などによって異なります。
参考にした情報源
- 厚生労働省「令和8年度 地域別最低賃金の答申状況」(2026年9月3日公表)
- 日本年金機構「2026(令和8)年10月に社会保険の短時間労働者に係る賃金要件が撤廃されました」
- 日本年金機構「保険料調整制度のご案内」
- 埼玉労働局「埼玉県最低賃金改正のお知らせ」


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